嫌な夢を見た。
また俺はルキアの背中を見送っていた。
どうやっても俺の身体は動かない。



はっと目を覚ますと、体中がじっとりと汗で湿っていた。
外はまだ暗い。
「なんだよ・・・まだ4時かよ」
側にあった目覚まし時計を見て小さく舌打ちをした。
枕にもう一度頭を沈めると押し入れの方を見る。
なんでこんな夢を見たか分かってる。
去年のこの日にルキアがいなくなったからだ。
この手で連れ戻したのに。
俺はまだこんなに怖がってる。

ベットから抜け出すと押し入れへとそうっと足を進める。
ふすまを開けると意外な事にルキアは目を開けてこちらを見て いた。
「・・・起きてたのかよ」
「いや、なんだか声が聞こえたような気がして・・・・。
 お前なにかいったか?」
「わかんね。なんかいったかもしんねぇけど」

もしかしたら悲鳴だったのかもしれない。
彼女の名前を呼んだのかもしれない。
俺はまだ眠そうなルキアの身体を抱え上げると自分のベットへ 押し込んだ。
「な、なんだ?」
抗議の声を無視してその隣に滑り込む。
もちろん一人用のベットだから狭いけど、ルキアを抱きかかえ て横になれば
二人寝れない事は無い。
「もう!痛い!!お前そんなにぎゅうぎゅうして私を抱きつぶ すつもりか!」
知らずうちに腕に力が入りすぎていたらしい。
ルキアが本当に苦しそうにいうのであわてて手をゆるめた。
「どうした?」
胸に顔を埋めたままの俺の頭を細い手が撫でる。
「夏休みにさ」
「うん?」
「海に行こうな。お前海見た事なかったろ?」
ほら、今は未来の約束だって簡単だ。
だって彼女はここが居場所なのだから。
それを確かめるようにたくさんの約束をする。
「そうだな、海へ行こう」
ルキアが少し笑って答える。
「あと、花火大会。お前去年見れなかったろ。あれ、見に行こ うぜ」
「うん。行こうな」


この約束が枷になればいい。
俺の腕が鎖ならばいい。
そんなことを言ったら多分お前は笑うけど。


「一護」
「あ?」
「こないだ行ったお祭り楽しかったな」
「ああ。そうだな」
「来年も行こうな。またりんご飴が食べたい」
「そんなもん、いくらでも連れてってやるよ」
「来年もその次も。毎年行くからな」
そう言うルキアが本当に幸せそうに笑うので。
もうあの夢は見ないかもしれないと俺は思った。










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蜜蜂様からの頂き物でした!
素敵なSSを提供して頂きありがとうございます!!
一護とルキアの未来の約束…。ルキアの居場所として繋いでいられるように、という一護の気持ちが切ないです(> <)

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